人事側から見た『副業・兼業』の労務管理のポイント
ここ最近『副業・兼業』をしている人は、800万人以上に上るとNHKで報道されていました。全就業人口の12%くらいになるとのことです。
『副業』と『兼業』に明確な定義はなく、国等の公的な機関の文書等ではまとめて「収入を得るために本業以外の仕事を行うこと」の意味として『副業・兼業』と使われています。
厚生労働省が作成しているモデル就業規則でも平成30年1月版からは、これまでの労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」から、副業・兼業が「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」と改訂されています。
こういう『副業・兼業』者が増加している状況のもとで、人事部等で労務管理を担当されている方は次のような業務が煩雑になってきます。
- 労災保険
・複数事業労働者の通勤災害
・複数業務要因災害
⇒副業・兼業労働者の労災発生時の手続きが煩雑になる - 雇用保険
・令和4年1月から、65歳以上の労働者が対象となるマルチジョブホルダー制度の開始
⇒65歳以上の副業・兼業労働者の雇用保険の取得・喪失手続き、離職票の作成、給与計算の事務処理が煩雑になる - 社会保険
・パートタイマーの加入基準の改正
令和4年10月から被保険者数501人以上→101人以上
令和6年10月から被保険者数101人以上→51人以上
・二以上事業所勤務届(複数の事業所で加入要件満たす場合)
⇒社会保険加入対象者の拡大による取得・喪失手続きの増加、二以上事業所勤務届の提出や保険料の案分作業が煩雑になる
『副業・兼業』者が増えてくると、労務管理のご担当者にとっては上記のような手続きが増大し、また複雑になってきます。業種によっては、特に介護や警備といった事業所を複数掛け持ちしている、65歳以上の従業員が多いところでは、上記に該当するところが多くなってくることが予想されます。
副業・兼業の取り扱いは、事務処理の増加に加え、今後はこれまで以上に、
- 採用時や採用後の副業・兼業の有無の確認
- 社会保険料の増加等に伴うコストの管理
- 従業員の健康管理
- 機密情報の管理
が必要になり、経営に大きな影響を与えるものと考えられます。